今まで数多くの銀行や投資家に対して事業計画を見てもらい、かなり多くの金額を集めてきた。200億円をはるかに超えているのは間違いない。多いか少ないかは置いといて、こんなことを書いて誰かを詐欺ろうとか考えているわけではないので安心してもらいたい。さて、本題である。事業計画を書くコツを少しだけ。
まず何をどのように売るかだ。市場(ターゲットユーザー)、モノ、値段、意匠。目新しい商品だとハードルは高くなるので、この4つを論理的に納得のいく仕組みに高いレベルで書き上げることだ。これが売上になる。費用面だと、まずは広告宣伝費。どのように売るかに直結することなので、媒体の選び方、担当者の経歴、費用の合理性について抜かりなく述べる必要がある。百戦錬磨の銀行マンや投資家が相手だと、高い安いはお見通しなので、合理的というのはとても大切なキーワードだ。次に人件費。どう見積もるかだが、簡単なのは貴方が一緒に働きたいと思う人の顔を思い描き、年収を12分割して入れ込めば良い。もちろん部署ごと。これに法定福利費を加えると人件費は完了。その他の一般管理費。経理経験のある人だと、社員数にスライドするものや、販売数量にスライドするものなど、ある程度は頭の中に想像できる。ポイントは「何にスライド」させるかだ。そこの基準をしっかりと持っていないと信頼してもらえない。それと年に一回ぐらいしか出費機会のないイレギュラー項目を対応する時期に当て込めばOK。某ビール会社はお酒の神様への初詣玉串料を計画の中に盛り込んでいる。
ここまで作って、損益計算書を作り、資金計画を作る。資金計画を作るときは入金サイトと支払サイトに注意をするように。先に損益を資金に落とし込み、残高がマイナスにならないように借入金を入れる。手形は使わないように作った方が良い。手形はICBMのスイッチと一緒で押されたら一発アウト。手形を入れ込むと一気に倒産リスクが高まるので嫌われる。手形を使うビジネスには素人は足を突っ込まないことだ。借入金額を入れて返済計画を反映させ、忘れてはならないのが金利や配当金。資金繰りまでできると、超上級コースとして予想貸借対照表まで作ることができる。ただし予想貸借対照表は一番最後だ。銀行が予想貸借対照表まで見たいと言いだしたら、正直な話、それは断り文句だ。作って持っていくと多分驚かれる。過去の貸借対照表の作成は経理ソフトに打ち込めば良い。貸借対照表の分析なんて経理の知識がなくてもできる。貸借対照表の分析なんて財務担当者からすると朝飯前の遊び程度のこと。予想貸借対照表は経過勘定の仕組みが丸ごと頭に入ってないと作れない。銀行マンだって作れる人間がどれほどいるかは分からない。
数字はそう言うものだが、一番大事なのは事業計画をストーリーとして書き上げることだ。よくパワーポイントを多用した計画を作る人がいるが、悪くはないけど感心はしない。A4用紙5枚ぐらいでベタ打ち文章が一番良い。起承転結があればなお良し。相当な文字数になるが、パワーポイント500枚ぐらいの威力がある。逆に言うとパワーポイント500枚を5枚の文章にしてしまえば良いのだ。簡単に書いたが、まずパワーポイント500枚分のアイデアがないとダメね。それを5枚にするのは意外と簡単である。
さて、前回も書いたように、事業計画を作成するだけなら訓練すれば誰でもできるようになる。しかし、人の心に訴えかけられるような事業計画が書けるようになるのは別。それにはどの程度の能力が必要なのか??多分、MBAなんて目じゃないぐらいの能力だと思う。昔、MBAのケースメソッドにチャレンジしたことがあるが驚くほど簡単だった。MBAのカリキュラムなんか受けたことはないが、実は事業計画を作成することがケースメソッドそのものなので、MBAクラスが簡単なのはあたりまえなのだ。MBAホルダーなんて大したことない。ただ、資格として書けるのは利点として認めるがね。
ということで、なんでも良いので、自分のやりたいことの事業計画を書いてみると良い。よく事業計画に対して否定的な人もいるが、多分きちんとした訓練をすることなく(ほとんどの場合、面倒臭くて)、たまたま金を出してくれる人を見つけただけだと思う。人を説得するのに、この人は大丈夫だと思わせる裏付け=事業計画なのだ。是非チャレンジするべきだと思う。
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