チームワーク

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プロローグ

昨日のことですけど、チームワークがうまく機能した良い例があったので紹介しようと思います。

何が起こった?

消える寸前だった「生きる意志」に火を灯したのです。ちょっと感動的な言い回しになってしまいましたけど、これは盛っていません。
僕は現場に介入しないようにしているのですが、ある一本の電話が僕の重い腰を上げさせました。それは入居者様のキーパーソンからの電話。僕にそのキーパーソンの家族である入居者さんのことを救ってくれと言っています。それから介入していなかった現場への聞き取り。 1ヶ月ほど前に骨折で入院していた病院から退院してきた入居者さんのことです。退院後、生きる気力が徐々に失われ、拒食と拒薬でみるみる衰えてきました。もちろんスタッフは努力をしてくれていましたが、肝心なところで努力の線が切られていたのです。それは入居者さんの医療不信でした。入居者さんは長く首の痛みを訴えられているのですが、CTもMRIはもちろんレントゲンも異常なし。医者の診断は痛みそのものが思い込みだろうということで病名が付きません。必要と思われる検査を受け病名が付かないと、更なる検査も治療も受けられないのです。結果、入居者さんの心には「医者は何も分かってくれないし、何もしてくれない」という思いだけが残ります。検査をしても原因不明の疼痛(専門用語ですみません。辞書で引きやすくしました。「とうつう」と読みまして痛みのことです)と言うのは高齢者によくあることです。例えば、加齢に伴い脳の痛みを感じる部分への過度な刺激だったり、本当に医者の力量不足で原因を見過ごしていたり、画像診断では見えない神経への刺激だったりするのです。いずれにしても、医者の力量を超えたところでの疼痛というのは、一般的に精神障がいと診断されるケースが多いと思います。僕らがチームワークでやったのは、当面(行政の介入と相応しい医療機関が決まるまで)の生きる希望を持たせることでした。

行動

まず、入居者様の目視とヒアリング。1ヶ月前とは別人と思えるほど痩せています。現場の話では先週から食事が喉を通ってないとのこと。昨日、医師が往診に来て点滴の特別指示を出してくれそうだったのに対して本人の点滴拒否……無理やり点滴をしても抜いてしまう可能背が高いので、特別指示は取り消されたのです。見た感じでは「1週間保たんな」が率直な感想。とは言っても、一番死なせてはいけないパターンなのです。人は死ぬ時は何か一つでもいいから充実感を持って天国に行って欲しいと願っています。それは極端な話、本人にはなくても家族にあればいいのです。でも、それが全くない状況では死なせてはいけない。(これは僕の勝手な思いかもしれません)
ヒアリングについて僕は一方的に聞くだけです。遣る瀬無い気持ちからか、明らかに妄想が入っていますが、黙ってメモを取りながら聞きまして最後に質問しました。
「どうしたら楽になれるのでしょう?」
答えはひとつでした。
「痛みを取ってほしい」

ここからがチームワーク

僕がヒアリングをする前に、医者も説得しているし施設長も看護師も説得していましたが、どうしても食事を受け付けてくれません。僕がやったのはパートさんへの相談でした。正確に言うと、ヒアリングした内容をパートさんに話して「このままだと来週いっぱいの命」と付け加えてみたのです。なぜパートさんなのか?その入居者さんに一番触れ合っているからです。みんな責任ある話は責任ある人からするべきだと思っていませんか?間違いです!
相応しい人からするべきなのです。生きて欲しいと心から伝えられるのは、一番触れ合っている人が相応しいと思いました。ところが僕は別に「食事を取って欲しいと言ってくれ」とか「点滴を打ったほうがいいよと言ってくれ」とは伝えていません。パートさんが、自然と自分たちの言葉で伝えてくれると信じていました。その一方で施設長と看護師には、医師と家族への連絡をしてもらいました。医者は拒薬と点滴拒否でヘソを曲げている可能性が高いですので、ご機嫌直してって言ってくれです。

結果

1時間後、パートさん2人が僕のところに来て言うには
「点滴打ってくれって。それと太巻きが食べたいから買って来てくれって言ってます」
やった!僕の勝ち!
すぐに点滴の用意をしてもらい、太巻きを買いに行ってもらいました。施設長にはパートさんにお礼を言っておいてねと伝えたんですけど、彼女らは入居者さんに何て言ったのか?
「点滴打ったほうがいいよ」だけらしいですwww
でも、それが入居者さんの心に響いた言葉だったんですよね。
医者も看護師も施設長も響かせることができなかったのに、パートさんの短い言葉がこの入居者さんの生きる意志に火を灯したのでした。

エピローグ チームワークで大事なのは導火線に火をつけること

僕がやったのはそれだけです。施設長には指示しましたけど、パートさんと看護師さんには指示していません。人の優しさにつけ込んで(表現が悪いな)、人を助けたいと言う気持ちに火をつけて、それを結果的にチームワークとして成立させたのです。
ワンフォアオール、オールフォアワンってあるでしょ。あれって理想を言葉にしたのではなく、火をつける言葉なんだと思います。
ま、一つの命が助かってよかった。その入居者さんの寿命はいつか来ますが、今ではない。
それともうひとつ大事なこと……「痛みを取ってほしい」はまだ叶っていません。それはこれからですw

では、また次回!

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この記事を書いた人

チームワークを得意とする介護業界に勤めるサラリーマン。Macで仕事をしていますが、それだけでモチベーションが上がります。時々、山に登ります。コタローという名の保護猫を飼っています。ゆったりマイペースで参りますので、よろしくお願いします。

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